喫茶店で思い耽ったことを

頭の中で整理したりしなかったり

鄙人


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木々に囲まれた喫茶店で食事をしていた。10ポイントで飲み放題のコーヒーをお代わりしていると、店員たちが玄関に集まって外を見ながらソワソワしているのが視界に入った。焦った店員の一人がバックヤードに走っていく。違和感に気付いた客たちもザワザワし始めた。勘が鋭い私は「…いよいよ熊か」と察した。仕方ない、これが北海道なのだ。おそらく喫茶店内にある飲食物目的だろうが、これだけ人が多ければ刺激しないかぎり襲っては来ないだろう。今は静かにやり過ごすしかない。しかし、客の爺さんが「どれどれ」と興味本位で向かっていき、勝手に外へ出ていこうとした。店員たちが「…え?だめ!危ないです!」と引き止めるも、爺さんは「いやあ私は田舎出身だから云々」とモゴモゴ言いながら皆の制止を振り払い自動ドアを開けて出ていった。悪い予感がした。「え、え?」と戸惑う店員たち。外で何が起きているのか、ちょうど私の席からは見えない。ホラー映画だったら、まさに恐怖の始まりのような状況だった。緊張が走り、私は冷たいデザートを頬張って気持ちを落ち着かせた。爺さんが戻ってきた。店員たちは混乱している様子。聞き耳を立てると、どうやら巨大スズメバチを帽子で捕まえたようだった。「トイレットペーパーでグルグル巻きにして流せば大丈夫だ!なっはっは!」と大声で自慢していた。私は4杯目のコーヒーをお代わりした。