喫茶店で思い耽ったことを

頭の中で整理したりしなかったり

時代

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たまに行くネオ純喫茶は刺激になる。こそばゆい変なツボを押される気分。郷に入っては郷に従え精神で挑む。令和の社会勉強の場かもしれない。

マツコの知らない世界』という番組で『昭和レトロ喫茶店の世界』という特集をやっていたので、TVerの見逃し配信で観てみた。私も行ったことがある新橋カトレアや蒲田チェリー、梅田King of Kings・マヅラなどのほか、喫茶ファンにはおなじみの店が楽しそうに紹介されていた。そういえば以前にも喫茶店特集をやっていたような気がしたので調べてみると『純喫茶グルメの世界』は7年前の2016年だった。時が経つのは早い。神田エースののりトーストや虎ノ門ヘッケルンのジャンボプリン、吉祥寺くぐつ草のオムカレーなどが紹介されていて、今思えば画的には渋めで落ち着いた特集だったと思う。今回は平成生まれの2人が「エモい&ディープ」という切り口で、終始テンション高めな仕上がりだった。番組中で引っかかってしまったのが「最近はなんちゃって昭和が増えている」という話題。昭和好きの古参たちにとって「平成生まれのお前が言うな」案件だったと思うけど、あれはバラエティー番組特有のイジりに近いものだと察したので仕方ない(でも昭和時代のデザインを復刻しているアデリアレトロを例にしたのはマズかったと思う)。確かに建物が取り壊されたら歴史が終わる店は多いけど、新宿西武や向島カドみたいな移転もある。本物の昭和レトロ喫茶店特有の内輪感あるクセが強い年寄りの常連客や濛々としたタバコの煙を排除して、SNS映えする可愛さのエッセンスだけを特化させて若い店員と若い客で作られた空間のネオ純喫茶が流行るのも別におかしい話ではない。むしろ増えてくれたほうが喫茶店の多様性に未来があるはず。みんなで程よく棲み分ければいい。とにかくブームで括らずに廃れないでほしい。

最近発売された岡本仁著『ぼくのコーヒー地図』に書いてあった一文が印象的だった。「店の雰囲気は自分たちがつくっていると感じる客が多ければ多いほど、ぼくにとっては居心地のよい店なのだ。何故なら、それが他の客をリスペクトするという態度だと思うから。だから、店と客との親密すぎる関係を必要以上に目にすることはなく、目にしたとしてもそれを心和む光景と捉えることができ、安心してコーヒーを飲んでいられるのである。」

店内の空間は本来、店側が主導権を握っている。ルールを定めて間接的に、時には直接コントロールをしている。その規範からはみ出る客は老若男女を問わない。常連が出禁になるパターンもある。もしかしたら自分も一見客を遠ざけるような存在になっているかもしれない、と考えれば何も偉そうに言えない。店を信頼して、身を委ねたていきたい。最近の私は、どんなに行きつけで仲の良い喫茶店でも他にお客さんがいるなら店側から話しかけられない限りは必要以上に会話をしないようにしている。その効果があるかどうかはわからないけど、私は常連客の圧でムズムズした経験が何度かあるので。ほんの少し我慢する代わりに、好きな店には何度も足を運べばいいだけなのだから。平穏な距離感を求めて。