喫茶店で思い耽ったことを

頭の中で整理したりしなかったり

待機

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昼間、狸小路1丁目付近の駐車場に車を停めて10分くらい待つ。目の前をはしゃいだ家族が過ぎてゆく。ダウンジャケットがカラフルだ。母親が子供をそりに乗せて引きずっている。背もたれ付きだった。時間になったので車を降りて歩く。観光客で溢れかえる二条市場を掠める。数人のスマートフォンの画角を横切って横断歩道を渡る。美容室の前まで来てから予約のメールを確認する。今日ではなく明日だった。なんだか、どうでもよくなった。そのまま狸小路を1丁目から西へと進む。人を避ける。人を避ける。大通公園雪まつりが開催しているのを思い出して見学しようと北上する。見えてくる人人が面倒になって、喫茶店に入る。静かに時間をつぶしたくなった。ドアのベルが鳴らないようにゆっくり開ける。小さく鳴る。待っている先客が1人。カウンター席が2席空いているのが見える。先客と私は店員にカウンター席へ案内される。混んでいる時は面倒なのでアイスコーヒーなど調理が簡単なメニューにする。特段のこだわりはない。居たい場所に居たいだけなので正直おまかせでもいい。信頼している。先に並んでいた人のオーダーを待ってから注文する。まだ洗えていない皿が重なっているのを見る。ドアのベルが鳴る。後客が入口で大人しく立って待っている。目線を気にすると本は読みづらい。注文を終えた隣の客は本を読んでいる。反対隣の客は料理の写真を撮りズズズッとホットコーヒーを啜る。時計の音が聞こえる。私はアイスコーヒーを飲む。入口で客が待っている。乾いた唇にストローがくっついた。

先日、待ち合わせをした。喫茶店を突然閉店させた元店主と。約束をして会うのは小っ恥ずかしかった。比較的、元気そうだった。喫茶店の時は会いに行けば会えたのに、と言った。でも会いたくない人にも会うんだよ、と言われた。笑ったほうがいいと思って笑った。普通、人は会う約束をしなければ会えない。待っているだけでは尚さら会いたい人と会えないことを実感した。そんな当たり前を知る。いや、わかっていた。他に何を話したかは覚えていない。ただ、同じ目線の高さで向かい合って話すのがむず痒かった。喫茶店のカウンターは、店と客との関係は、私の人見知りを、自信の無さを、紛らわせて、和らげてくれている。喫茶店に居る時間くらいは"よしかかっていたい"。身を委ねていたい。気を緩めていたい。信頼していたい。現在進行系で刻み続ける何もしない灰色の時間に、無責任な期待をしていたい。